2001年宇宙の旅:あのモノリスの正体は?−5
オデッセイ帰還(新たなる始まり)2000年5月6日



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2061年宇宙の旅3001年終局への旅
2061年宇宙の旅
3001年終局への旅


 ポッドがコトンと何か固いものに触れた感触があり停止した。着陸?何の上に?光が戻ってきた瞬間ボーマンは気が狂ったと思った。予想していなかった唯一のもの、あまりにも日常的な風景であった。

 地球の大都市ならどこにあってもおかしくない、上品なホテル・ルームのフロアに着陸していた。現実か、それとも現実と見分けがつかないほど精巧に作られたまぼろしか?どちらも正解であった。その中でボーマンは生活するが、食物、書物、新聞、テレビすべて本物であり、しかもイミテーションであった。本は何冊もあるがすべて同一、食物は形こそ違え味は同一で、テレビのニュースも同様であった。そして単調な生活を繰り返しながら次第にボーマンは年老いて行く。やがて、死を迎える瞬間、振り子が頂点に達するとやがて逆転し元に戻るように時間が逆転し始めだんだん加速し、一瞬のうちに胎児へと変換されて行く。その瞬間周囲の物体はすべて燃え尽きた超巨星のコロナの中にスター・チャイルドが超然と浮かんでいるのであった。
 すべての時空、森羅万象のことが明確に理解できた。地球の場所も、帰る方法も簡単であった。来るときに用いたスター・ゲイトを利用することも可能で構造も簡単に理解できたが、不要であった。心に念ずるだけで、地球を見下ろす位置にスター・チャイルドは出現した。ちょうど水爆を搭載したミサイルが米ソ間から相互に発射されたところであるが、それを宇宙空間で処理した。スター・チャイルドにはこれからなさねばならない仕事が山積みであった。
 米ソ間と言うあたりが時代を感じさせる。さらに、「2010宇宙の旅」では太陽系の一員としてエウロパ人も加わり、また地球も含めてそれらを見守っている神に等しい存在が明らかとなり、米ソなど小さいことを言っているときではないことで、物語は終わっている。
 最終の部分は映画と表現が違うが、根底に流れるものは同一である。映画の中で、必ず1シーンの中に、年老いた自分を見つけ、見つけた瞬間に意識は新しい自分の中へと移り、時間が変化することを示している。従って、あの中で経過する時間は長時間とも一瞬ともとれるのである。また、映画の中ではスター・チャイルドはモノリス(スター・ゲイト)の中を通過し地球に帰ったような表現になっている。
 原題は「2001:宇宙のオデッセイ」であるが、まさにオデッセウスがトロイ戦争で辿ったように、地球から出発し再び地球に戻ってくる一大叙事詩である。この話はご存じのように「2010年宇宙の旅(映画化)」、「2061年宇宙の旅(未映画化)」、「3001年終局への旅(未映画化)」(写真)と続く物語である。2010年では、最終的にボーマンとハルがモノリスを使用しながらエウロパを保護して行く役目につくのである。更に2061年ではフロイド博士もそのような純粋知性体となり、当面は太陽系文明を守る立場となるのである。3001年終局への旅では、ハルによって殺害されたプールがよみがえり、モノリスを通じて人類(エウロパ人も含め)の意志を創造主に知らせ、ついにはモノリス自体消滅するが、更なる、宇宙文明の飛躍を期しながら物語りは大団円を迎える。壮大な物語りであるが、基本的なコンセプトは「2001年宇宙の旅」で語り尽くされていると言えよう。まさに、「前哨」こそが、全てを物語っているのである。
 以上が制作側が意図しているストーリーのようである。但し、キューブリック監督は「映像以外に語るつもりはなく、観客がそのようにとらえたならそれは、あなたの2001年宇宙の旅であり、それで十分である」と言っているので自分が最初に感じたものは大切にしたいものである。例えば音楽を聞いたり、絵画をみたりした時は、各々が感じた印象こそがその物に対する解釈であり、他人の解説など必要ないのと同じであろう。
 しかし、一応の筋道は理解したいと思うのも当然である。この内容を読んでからもう一度映画を見ると一段と感動していただけるものと確信する。私個人としては、映画版は何十回となく見たが、見るたびに鳥肌を立てている。特に重要な場面で流される、もう他には考えられないあのあまりにも有名となってしまった音楽「ツァラトゥストラはかく語りき」がかかるとたまらない。今となっては、初演ロードショウを劇場で見れたことを、誇りとさえ思っている。「2001年宇宙の旅」は、SF映画の枠を越えて、映画の最高傑作であると私は思っている。もし、身近な劇場でリバイバル上映されることがあれば、生きている限り見に行くつもりである。
 小説「2061年宇宙の旅」の最終章付近で純粋知性体となったボーマンとフロイドが興味深い会話をしている。これこそが「2001年宇宙の旅:あのモノリスの正体は?」に対する答えとなろう。
 「ハルはモノリスの内部システムを綿密に調べてきて、われわれは単純な仕組みの一部を制御できる。あれは多くの目的を果たす道具なのだよ。その主要な機能は、知能を触発する事らしい」「あれは道具にすぎない。桁外れの知能を持っている――だが、自意識はない。あれだけの能力があっても、あなたや、ハルや、わたしは、あれより上位にあるのだよ」 (2061年宇宙の旅:山高昭訳、早川書房より) 
 どうも、長い間、ご清聴ありがとうございました。最後に一言「皆様にもすてきな宇宙の旅を!!」

            ( To have so nice space travel. God be with thee!!! )

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