2001年宇宙の旅:あのモノリスの正体は?−3
惑星探検ディスカバリー号 2000年4月4日
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写真1
セントラルへ向かうボーマン船長
写真2
HAL認識フィードバックパネル板と
ボーマン船長(上)
AE35ユニット交換中(下)
惑星探検ディスカバリー号は優秀な世界最高のコンピュータ、HAL9000(ハル)を搭載し、3名の人工冬眠した科学者、2名の操縦士が乗り組んで木星探検に出かけた。「有史前から、地球は何者かによって監視されている」、世界中に及ぼすカルチャーショックによる混乱を防ぐために、月で発見されたモノリスのことはほんのわずかの人にしか明らかにされていなかった。従って、この探検の真の目的は完全にベールに包まれていたのである。当然、見送った一般大衆、ボーマン船長、プール副操縦士も知らされていない。知っているとつい家族など身近な知人に漏らしてしまう危険性があるためだ。知っているのは目的地に到着したときに目覚める人工冬眠の科学者たちとハルのみであった。さらに、ハルはその事実をボーマンやプールに悟られてはならない、つまり嘘をつくようにプログラムされていたのである。また、ハルは、たとえ人間が事故や伝染病などで死に絶えたとしても、自動操縦でディスカバリー号を目的地に到着させて木星の軌道上に存在するだろう事象を確認することを至上命令とされていたのである。
コンピュータに嘘をつかせるプログラムがいかに困難なものとなるか、多少ともコンピュータのプログラムをあつかった人なら絶対に不可能と悟るはずである。ハルは次第にロジック回路の調子が狂い始めた。「個人的な質問なのですが、ボーマン船長、今回の任務には最初から不明な点がある、そうは思いませんか?妙な噂も流れていた、月で何か掘り出されたとか、3人の乗組員は特殊な訓練を受けて既に人工冬眠中である。私自信、疑問を拭い切れません」 ボーマンとプールがどの程度理解しているのかを、探るような質問を投げかけてきたり、わざとアンテナ回路AE35ユニットが故障だと告げて自分に対する信頼度を試したり、次第に変調が激しくなるのである。
「最終的にはコンピュータを切断し、人工冬眠の人員も補助として覚醒させる」、とんでもない計画が画策されている。このままでは至上命令が実行できない、妨害するものはなんとしても排除しなければならないとハルは考えた。
ハルとボーマン船長の生き残りをかけた戦いは大きな見所であり、更に大きな疑問を観客に投げかけて来る場面である。「何故、ハルはあのような行動を・・?」 理解していただけましたか?
声が急に止まったので、ボーマンはまだ回路の中にある記憶板をつかんだまま、一瞬凍りついたようになった。そのとき思いがけなく、また、ハルが話し出した。
「おはよう・・・チャンドラ・・はかせ・・・わたしは・・・・はるです・・・きょう・・のさいしょ・・・のじゅぎょう・・・をはじめて・・・くださ・・・い」
それ以上は聞いていられなかった。彼は最後のユニットを引き抜いた。そして、ハルは永遠に沈黙した。(2001年宇宙の旅:伊藤典夫訳、早川書房より)
プール副操縦士同様にハルも、計画のかわいそうな犠牲者といえる。 そして・・・・・
木星の軌道上に悠然と浮遊する一片が2qもある巨大なモノリス。・・このモノリスはいったい?
( 2001:A SPACE ODYSSEY , To be continued Part 4 )
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